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ひなたぼっこの縁側日記

日々のことをつれづれなるままに書いて行きたいと思います。
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短編(初恋その2・・・)

広い野原のなかでかけっこや鬼ごっこをして時間が
経つのが 早かった。

元気に駆け回り丈夫な児になって父と母は安心
したのだ。

着物の裾が脚に絡んで転んだ拍子に鼻緒が
切れた。

一番最初に飛んで来てくれたのは勇ちゃんだった。

ブリキ屋の勇ちゃんは6年生で毎朝家まで迎えに来てくれて
学校に連れて行ってくれる。

紺絣の着物姿が大人びていてお兄さんのようで好きだった。

抱き起こされて膝の泥を払ってくれる仕草をドキドキしながら
長く続けばいいのにと思っていた。

「下駄の鼻緒が切れているよ」
手早く腰の手ぬぐいを歯で切り裂くと手際よく鼻緒をすげ替えて
呉れた。

「さぁ~送ってあげるからかえろうね」
優しいお兄さんのようで何時までもこうして歩いていたかった。

楓の落ち葉の引き詰められた道に来ると前に屈むと背中を向けて
負んぶしてくれた。

暖かい背中に顔をつけて・・・お兄さんが欲しいと思った瞬間だった。

ゆっくりと歩きながらもうじきこんな事も出来なくなるんだよ
と話されたけれど理解をする事は出来ないでいた。

ある晩母がお別れに行きましょうと私を連れて勇ちゃんの家に行った。

集団疎開で長野に行くと聞かされて私は泣いた。

恋を知らない密やかな初恋は終わったのだろうか。


太宰が心中した玉川上水の流れる桜橋の上に立って思いに耽る私は
来年古稀を迎える。

高い建物が建ってもう富士山を観ることは出来なかった。




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