桜一枝・・・

小田急線の鶴間で降りて病院までの道程は
子供の足では30分は掛かったと思う。

学校から帰ると鞄を置くより早く「行ってきま〜す」
と嫌な顔一つ見せずに病院に行く息子だった。

季節の変わり目で家を出たときは良いお天気も
いつの間にか雨が降り出し見る見るうちに本降りに
なってきた。

病院に無事に着いたか気が揉めたが術後の身体では
身動きが出来ず只心配をするだけで。

ざっと来てさっと上がった雨だったが夕方帰った息子に
「雨に降られたでしょう」と聞くと「降られなかったよ。」と
一言。

後で聞いた話しでは、ずぶ濡れになって父親の元に辿り着いたそうだ。

看護婦さん達が大急ぎで着替えさせてタオルに刳るんで着ていた物を
乾燥室で乾かして着せて返してくれた事を聞いて涙がでた。

言葉を失った父親を良く見舞ったある日の息子の姿です。

手には一輪の八重桜が握りしめられて父親の顔の上で春が来たことを
楽しそうに話していたとか・・・

あの時小学5年生の息子がこの夏で四十路に這入る月日は休むことなく
流れている、桜の季節に思い出す幼い日の我が子の姿。


「桜花一枝手折り手土産に父見舞いたる吾子も四十路か」

「我が身をば労う言葉嬉しくて四十路の人を労り返す」
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